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英訳作業が始まりました!【プロジェクト通信No.1】

本エントリーは、米国共産党調書英訳プロジェクトに賛同してくださった皆様へ1月19日付メールマガジンで配信した内容の転載です。

評論家の江崎です。
クラファンを始めて一か月。
英訳作業がついに始まりました。

『米国共産党調書』は、近現代史、軍事、インテリジェンス、日米関係、そして当時のアメリカの状況を知らないと、英訳は難しいものです。
そこで、この英訳を進めるためには、背景についてある程度、理解してもらう作業が必要であり、昨年、英訳担当者にはまず背景知識の獲得、つまり関連書籍の読み込みをしてもらっていました。

 なお、1月13日付の産経新聞正論欄に下記のような原稿を書きました。
このプロジェクトの存在を広く内外に知らせることも同時に進めてまいります。

パル判事の予言を現実のものに 評論家・江崎道朗
2022/1/13 08:00 江崎 道朗 

欧米の近現代史見直し進む
欧米において近年、第二次世界大戦を中心とする近現代史の見直しが進んでいる。
第二次世界大戦においてアメリカとソ連は「正義の国」であり、日本は侵略を行った「悪い国」だとされてきた。
だが、「ソ連、共産主義勢力の方が問題だったのではないか」という方向で近現代史見直しが進んでいるのだ。
その背景には、2つの大きな要因がある。
一つは、ソ連の解体と中・東欧諸国の「民主化」だ。
第二次世界大戦とその後のソ連による占領を受けてポーランド、チェコスロバキア(1993年にチェコとスロバキアに分離)、ハンガリーなどの中・東欧諸国はソ連の影響下に組みこまれ、バルト三国(エストニア、ラトビア、リトアニア)は併合された。これらの国々は50年近く共産党と秘密警察による人権弾圧に苦しめられてきた。
89年にベルリンの壁が崩壊し、冷戦は終結した。ソ連の支配から脱し、民主化を進めた中・東欧諸国やバルト三国は、ソ連による戦争犯罪と戦後の人権弾圧の実態を調査し、告発する戦争博物館を次々と建て始めたのだ。
もう一つの要因は、第二次世界大戦から50年を経た95年を契機として、欧米諸国が戦時中の、ソ連・国際共産主義の秘密工作に関する機密文書を公開したことだ。
91年、ソ連の解体によってロシア連邦となり、その初代大統領となったB・エリツィンは、ソ連時代の機密文書(通称「リッツキドニー文書」)の公開に踏み切った。
この情報公開によって、ソ連が戦前から戦後にかけて世界各国にスパイや工作員を送り込み、各国の機密を盗んだり、各国のマスコミや政治家に働きかけてソ連や共産主義に有利となるような世論形成、宣伝を行う影響力工作を仕掛けたりしていたことが立証されるようになった。 

旧ソ連の宣伝工作
この動きに触発され、アメリカ政府は95年、米陸軍情報部がソ連と米国内のスパイとの暗号電報を傍受し、解読した機密文書「ヴェノナ文書」(40~48年のKGBおよびGRUの本部とアメリカ駐在所間の暗号電報を傍受・解読した文書)を公開した。この公開によって第二次世界大戦中、F・D・ルーズベルト政権内部にソ連の工作員が入り込み、日米対立を煽(あお)っていたことが判明しつつある。
イギリス政府も90年代後半に「マスク文書」(30~39年、コミンテルンと各国共産党の間の暗号電報を傍受・解読した文書)と、「イスコット文書」(43~45年、コミンテルンとドイツ占領地域および中国の支部間との暗号電報を傍受・解読した文書)を公開した。
次いで2009年に「ヴァシリエフ・ノート」(A・ヴァシリエフが1924~51年の旧KGB文書を筆写したもの)を、2014年に「ミトロヒン文書」(V・ミトロヒンが1918~84年のKGB第1総局文書庫のファイルを筆写したもの)をそれぞれ公開した。こうした情報公開によって第二次世界大戦後、アジアの一部と中・東欧諸国が共産化した背景に、ソ連・国際共産主義による秘密工作があったことが分かってきた。
その影響か、国際共産主義への警戒心を指摘する政治指導者も現れた。その一人がD・トランプ前米大統領で、ロシア革命100年にあたる2017年11月7日を「共産主義犠牲者の国民的記念日」と定めた。 

「日本版ヴェノナ文書」も
一方、欧州議会も第二次世界大戦勃発80年にあたる19年の9月19日、「欧州の未来に向けた重要な欧州の記憶」に関する決議を採択した。第二次世界大戦を始めたのはナチス・ドイツとソ連であったにもかかわらず、ソ連の「犯罪」を不問に付したニュルンベルク裁判は問題があったとして、その法的調査の必要性を決議した。
実は日本政府も01年にアジア歴史資料センターを開設して情報公開を開始しており、戦前の日本外務省がソ連と米国共産党による対米秘密工作について詳細な報告書『米国共産党調書』をまとめていたことが判明している。
日本版ヴェノナ文書ともいえるこの『米国共産党調書』を英訳・発刊することで、旧ソ連と国際共産主義の戦争犯罪を追及する国際的な動きに日本も加わるべきだ。そう考えて、このほど『米国共産党調書』英訳プロジェクトを始めた。
1948年、インドのR・パル判事は、極東国際軍事裁判「判決書」の末尾にこう記した。「時が、熱狂と偏見をやわらげた暁には、また理性が、虚偽からその仮面を剝ぎとった暁には、そのときこそ、正義の女神はその秤(はかり)を平衡に保ちながら、過去の賞罰の多くにその所を変えることを要求するであろう」
この予言を何としても現実のものにしたいものである。(江崎 道朗)

 今後も進捗について皆様に情報共有していきますので、引き続きプロジェクトの応援をよろしくお願い申し上げます。
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